楽園



すり減っていくのを確かに感じていました。



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彼の手を包んで、目を見て、


大丈夫、一緒におるよ、大丈夫よ、大丈夫。


そう言えたらどんなにいいかと考える時間をミシミシキシキシと音を立てながらを過ごす中で、あの頃の私の「すき」は、不穏な狂想曲を奏でるようになった。

今この瞬間にジミンさんに会うことがなによりもお互いのためだと、すきならば今会わなければならないと、「すき」を「会う」という形にして表さなければならないと、そう信じて疑わなかった。私は字の如く狂ったように、彼を想いながら当たらなかった東京ドームのチケットを探した。


狂っていた。冷静であればできる判断もままならなかった。いや頭のどこかでわかっていつつ、藁にもすがる思いでその猜疑心に蓋をしていた。

そうして私はチケット詐欺にあったのである。


私はあまり泣かない人間だが、あの頃の私は、常に泣いていた気がする。

外側の私は懸命にいつも通りの生活を送る中で、ふとした拍子にひとりで、友人の前で、家族の前で涙を流した。

対して内側の私は、笑顔を忘れた。涙どころか、笑えなくなった。

私の世界一すきな人が、大切な人が、無数の銃口を向けられている。撃たれている。血を流している。震えている。声にならない声でうめき、涙を流している。

悔しくて悔しくて悔しくて、悔しくて、苦しくて苦しくて苦しくて、苦しくて、心が壊れると思った。

そんな中、死闘ののち手に入れたと思った会える権利を詐欺にあったことで掴めなかった私は確かに、「すり減って」しまったことを認めざるを得なかったのである。


純粋なすきと、苦しみに耐える力が、すり減ってしまっていた。


2018年は、彼らが私からどんどん遠のいていくような不安と寂しさと、それでも会いたいと願いがむしゃらに行動した年でもあった。


蓄積したそれに、この一件はとどめを刺したようであった。

常に戦っていたことに疲れてしまっていた。

それに比例するように、いつのまにか7人を愛し続けることにさえ疲れてしまっていた。






気付けば2018/11/13、私は3階席のチケットを握りしめ、東京ドームにいた。意地だった。


あの日は最初から、どこかいつもと違っていた。あの会場にいたアミはみなそう感じただろう。「伝えたい」という気が充満していた。もちろん、変わらない愛を、である。


正直緊張していた。

不安で悲しい気持ちのまま無理やり歌う彼を想像した。今回の一件で私のすきな人に私の住む国は、私たちは嫌われたかもしれない、仕方がないけれど、でも、苦しい。この公演をメディアはどう伝えるのかな。会場外でのヘイトスピーチが激化して公演に支障がでたらどうしよう。どうかもう私の大切な人を傷付けないで。

たくさんの想いが交差して、吐く息が震えた。






杞憂だった。




上がった幕の奥、そこには確かに私たちだけの楽園があった。

7人とアミで、抱きしめ合い、互いの温度を噛みしめる時間を過ごした。

土足で踏み入られた楽園を、傷付いた楽園を、私たちの音楽にのって手を繋いで、トントン、ヨシヨシ、ギュッと修復していくようだった。


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そこは鋭い言葉も汚い目も、誰も割って入ってくることのできない私たちの楽園で、今までも確かにここにずっとあったはずなのに、私が見失いかけていたホームだった。



簡単なこと。

7人とアミがいる、それだけで、いい。

7人は私たちを愛してくれていて、アミは、私は7人を愛している。

そこに嘘はひとつもない。

温かい、虹の7番目の色。

7人にとって、私にとっての

心が帰る場所。

もう忘れない。



すべて for you

答えなんて

なくていい全ては

君の笑顔の中にある

Truth

離れていても

心と心は繋がっている

Forever 君と



みんなで泣きながら繰り返し歌った。

伝えたくて、そして自分たちに歌ってあげたくて。

難しい問題はいくつもいくつもあるけど、答えなんか必要なくて、お互いの笑顔が全てなんだよね。お互いがお互いを愛してる、想いあってる。こんなに強いことってないんだよ。私たちは大丈夫、負けないね。だいすきだよ。


ちゃんと届いてたんだね。



serendipityの最後、暗転していく中でジミンさんが口にした「会いたかったよ」。

黄色の押し花にして、大切に心に飾っている。私もね、会いたかったよ。


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きっとこれから、たくさんのことが起こる。7人にも、そして私にも。でもきっと、なにがあっても、このすきが「すり減る」ことはもうない。

もし仕事とか家族とか、もっと他に優先したい大切なものができたら。

もし7人が別の道を歩むことを選ぶ時がくれば。

その時はこのすきをまた押し花にして心に飾るよ。紫色のね。そしてたまに약속を聴いたりして、大切で愛おしいこのすきを撫でるよ。



たくさんたくさん、私にくれてありがとう。

心の帰る場所をくれてありがとう。

世界一すきな人、大切な人。

私たちの楽園は、永遠だよ。



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